認知症 = 不幸なのか

認知症=不幸なのか
解放老人  認知症=不幸なのか


認知症が進むにつれ、がんの痛みを感じなくなる。

死に対する恐怖とも無縁になる。

末期がんにも苦しまず、安らかに永眠する。


これは、認知症の研究や治療、介護、看護にあたってきた専門家たちがよく口にする現実である。一般には、ほとんど知られていない事柄かもしれない。



つげ義春の名作「ねじ式」も顔負けのシュールな幻想を語ってやまないハナさん。

すきあらば病棟からの脱出を狙いつづける源五郎さん。

車椅子を両手でこぎまわりながら、悪罵と怨嗟のかぎりを叫びつづける徳子さん。

一日中、病棟の中をほぼ決まったコースで歩きまわる勘平さん・・・。


なんと個性的な人々であろうか。


山形県南陽市にある重度認知症治療病棟での取材を始めてすぐ、そこにつどう人々の圧倒的な存在感に目を見張らされる思いがした。


認知症の進行とともに、罹患者の内面から、常識や世間体や煩雑な人間関係といった余分なものが削ぎ落とされ、いわば”地肌”があらわになる。


それは、ときに目をそむけたくなったり見るに忍びなかったりするものであろうが、その人が秘めていた個性の核心であるに違いない。